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台風に伴う風・雨

室戸台風の被害(昭和9年9月21日:大阪測候所を写したもの)

台風に伴う風

台風に伴う風の特徴

台風は巨大な空気の渦巻きになっており,地上付近では上から見て反時計回りに強い風が吹き込んでいます。そのため,進行方向に向かって右の半円では,台風自身の風と台風を移動させる周りの風が同じ方向に吹くため風が強くなります。逆に左の半円では台風自身の風が逆になるので,右の半円に比べると風速がいくぶん小さくなります。左図は過去の台風の地上での風速分布を右半円と左半円に分けて示した図です。進行方向に向かって右の半円の方が風が強いことが分かります。

左図で分かるように,中心(気圧の最も低い所)のごく近傍は「眼」と呼ばれ,比較的風の弱い領域になっています。しかし、その周辺は最も風の強い領域となっています。

また,台風が接近して来る場合,進路によって風向きの変化が異なります。中心がある地点の西側または北側を通過する場合は「東→南→西」と時計回りに風向きが変化し,東側や南側を通過する場合は「東→北→西」と反時計回りに変化します。周りに建物などがあれば必ずしも風向きがこのようにはっきりと変化するとは限りませんが,風向きの変化は台風に備えて家の周りを補強する際の参考になります。

もし,ある地点の真上を台風の中心が通過する場合は,台風が接近しても風向きはほとんど変わらないまま風が強くなります。そして台風の眼に入ると風は急に弱くなり,時には青空が見えることもあります。しかし,眼が通過した後は風向きが反対の強い風が吹き返します。台風の眼に入った場合の平穏は「つかの間の平穏」であって,決して台風が去ったことではありません。

台風の風は陸上の地形の影響を大きく受け,入り江や海峡,岬,谷筋,山の尾根などでは風が強く吹きます。また,建物があるとビル風と呼ばれる強風や乱流が発生します。道路上では橋の上やトンネルの出口で強風にあおられるなど,局地的に風が強くなることもあります。

台風が接近すると,沖縄,九州,関東から四国の太平洋沿岸では竜巻が発生することがあります。また,台風が日本海に進んだ場合には,台風に向かって南よりの風が山を越えて日本海側に吹き下る際に,気温が高く乾燥した風が山の斜面を吹き下るフェーン現象が発生し,空気が乾いて乾燥しているため,火災が発生した場合には延焼しやすくなったりします。

台風に伴う雨

台風に伴う雨の特徴

台風は,暴風とともに大雨を伴います。台風は積乱雲が集まったもので,雨を広い範囲に長時間にわたって降らせます。
台風は,垂直に発達した積乱雲が眼の周りを壁のように取り巻いており,そこでは猛烈な暴風雨となっています。この眼の壁のすぐ外は濃密な積乱雲が占めており,激しい雨が連続的に降っています。さらに外側の200~600kmのところには帯状の降雨帯があり,連続的に激しいにわか雨が降ったり,ときには竜巻が発生することもあります。これらの降雨帯は左の図のように台風の周りに渦を巻くように存在しています。

また,暖かい湿った空気が台風に向かって南の海上から流れ込むため,日本付近に前線が停滞していると,その湿った空気が前線の活動を活発化させ,大雨となることがあります。

雨による大きな被害をもたらした台風の多くは,この前線の影響が加わっています。和歌山県南部に上陸した平成2年台風第19号は西日本の太平洋側で総降水量600~1,000mmの大雨を降らせました。

九州に上陸した昭和51年台風第17号は,台風が南の海上にあった時から西日本に停滞していた前線の活動を活発化させ,台風がゆっくりと北上したこともあって九州に上陸するまでの6日間にわたって各地に雨を降らせました。徳島県木頭村では1日だけで1,114mmの雨を降らせ,これは1日の降水量の日本記録となりました。また,木頭村での総降水量は2,781mmと,東京の2年分の雨に相当する大量の雨となりました。

このように大量の雨を数日のうちに降らせたため,1都1道2府41県とほぼ日本全域で被害が発生し,死者・行方不明者は166人,建物の全半壊・流失2,800棟,家屋の浸水45万戸以上,山・がけ崩れ4,000か所と甚大な被害が発生しました。

台風がもたらす雨は,台風自身の雨のほかに,このように前線の活動を活発化して降る雨もあることを忘れてはいけません。

大雨の影響


レーダーエコー合成図

台風がもたらす雨は大量の雨が短期間(数時間から数日)のうちに広い範囲に降るため,河川が増水したり堤防が決壊したりして水害(浸水や洪水)が起こることがあります。近年は治水事業が進み,大河川の氾濫は少なくはなっていますが,都市部では周辺地域の開発が進んで保水(遊水)機能が低下していることもあり,水害に占める都市部の被害の割合が増えています。

また,雨により山やがけが崩れたり,土石流の発生などの土砂災害も起こります。雨による土砂災害の犠牲者が自然災害による死者数(地震・津波を除く)の中で大きな割合を占めるようになってきました。近年の宅地開発は都市郊外の丘陵地や急傾斜地を利用することが多く,宅地造成により新たながけが形成されることが土砂災害による被害を大きくしています。

さらに,近年,アウトドアレジャーが盛んになり,キャンプをする人々が増えていますが,上流域に降った雨による増水により川の中州などに取り残されて救助を求めることも増えています。雨だけでなく,川の増水に対しても油断はできません。

気象庁ホームページ、福岡県防災安全課のホームページより引用しています